手術療法
腰痛で手術が必要な場合は限られています。ほとんどの場合は保存療法が行われます。
手術療法が検討されるケースとしては、腰痛のほかに排尿や排便の障害、麻痺が進行している場合は、重大な神経障害が起こっており、放っておくと回復が望めなくなるため、医師は手術を勧めます。
しかしそれ以外の場合、保存療法を続けても効果が感じられず、患者さん本人が望んだときに検討されることが多いです。起きている症状によって、患者さんがどれだけ困っているか、どのような生活を望んでいるかは一人一人異なるため、手術を受ける、受けないの選択が分かれます。
◆医師が勧める場合 |
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・排尿や排便の障害がある。 ・麻痺がある。 ・脚の筋力低下や麻痺が出てきた。 |
◆本人の希望の場合 |
・日常の生活に不自由がある。 ・症状が強く、仕事や趣味が思うようにできない。 |
方法
背骨の手術にはいろいろな方法がありますが、その基本は、「除圧術」と「固定術」です。
除圧術 |
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神経を圧迫している骨やじん帯を取り除く手術。 |
固定術 |
ぐらぐらと不安定になっている背骨を金属で固定する手術。 |
2つ同時に行うこともあります。
ひと昔前は、メスで患部を大きく切除して行うような大がかりなものが主でした。
しかし近年の医療技術の向上により、内視鏡を使った体の負担の少ないものや、保存療法と併用し効率的な方法が考案されるなど、同じ症状に対する選択肢が増えてきました。それぞれ長所と短所があり、どの方法を実施するかは、腰の状態や患者の体力や年齢、生活環境、本人の希望などを考えて決められます。
リスクについて
手術を考える際、手術の限界やリスクも知っておく必要があります。
手術さえ受ければすべてがよくなるというわけではありません。痛みがすっきり取れる場合もあれば、しびれや麻痺が残ったりすることもあります。特に脊髄が傷んだことによるしびれや麻痺は回復が難しく、手術後も残ります。また別の場所に新たに痛みが生じることもあります。
また手術には以下のようなリスクがあります。
[全身の合併症] |
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・呼吸障害 ・血栓塞詮症 |
[神経の合併症] |
・神経損傷 ・血腫 ・硬膜損傷 |
[傷の合併症] |
・感染症 |
[その他] |
・除圧術のあと、変形、すべり、ずれが進み、再び症状が出る。 ・固定した骨や椎間板が痛んで不安定になる。 |
受ける前に確認ポイント
手術を決める前に医師から説明があると思いますが、しっかり確認しておきましょう。
聞き逃したり、理解できていなかったり、気になることがある場合は、疑問を残さず、納得いくまで医師と話し合いましょう。
・病名と症状の原因。 |
・手術をしないとどうなるか、他の治療法があるかどうか。 |
・何のための手術か。 |
・医師としてはどの方法を勧めるか。その理由は。 |
・手術によってどの程度まで良くなる見込みがあるか。また改善しない可能性はあるか。 |
・手術にはどんな方法があるか。それぞれの長所と短所は何か。 |
・手術後の治療はどうなるか。 |
・手術によって起こる可能性のある合併症は何か。 |
・手術後、生活に支障が出る可能性はあるか。出た場合どう対処したらよいか。 |
・入院期間、日常生活に復帰できるまでどのくらいの期間がかかるか。 |
・費用はどのくらいかかるか。 |
不安や迷いがある時はセカンドオピニオン制度(主治医以外の医師の説明や意見を聞く)の活用をお勧めします。
大学病院などに設けてあるセカンドオピニオン外来を受診すれば、時間をかけてじっくり説明を聞くことができます。健康保険は適用されませんが、他の医師の意見を聞くことで、不安や今の状況、これからどうしたらいいかなど、より多くの情報が得られ、より納得して治療を受けることができるのではないでしょうか。
何より一番良い点は、一般外来ではどうしても十分な時間が取れませんが、セカンドオピニオン外来では疑問や質問にしっかり時間を設けてもらえることです(質問は事前に整理しておきましょう)。
※セカンドオピニオンを受ける際には、主治医の紹介状とそれまでのX線検査などの画像、検査データなどを持参するのが原則です。
主治医の説明だけでなかなか踏み切れない、主治医の先生だから聞けないなどの際は、セカンドオピニオン制度の活用を考えられてはいかがでしょうか。