脊柱管狭窄症
加齢により骨が変形したり、人体のしなやかさが失われ硬く分厚くなったりすることで、脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて起こるのが「腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」です。
中高年に多い症状で、50代から増え始め、70代では約12人に1人ともいわれています。
特徴的な症状
・背中を反らすと痛みやしびれが増し、前かがみになると楽になる。 |
・つま先やかかとで立てない。 |
・足の痛みやしびれで一度に長い距離を歩けない(間欠性跛行)。 |
タイプ別症状
腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫さえれている部位によって、「神経根型」「馬尾型」「混合型」の3タイプに分かれます。
◆神経根型 |
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脊柱管が狭くなり、神経根の部分が圧迫されているタイプ。 左右どちらかに起こることが多く、どちらかに起きている場合は、症状もその片側にだけ起こります。また神経根型は、腰を反らせると痛みが強まることが多いです。 |
◆馬尾型 |
脊柱管が狭くなり、神経が束になっている馬尾の部分が圧迫されているタイプ。 下肢の痺れ、麻痺が起こります。馬尾神経は膀胱や腸の働きにも影響しているため、排尿障害や排便障害が起こることもあります。 |
◆混合型 |
神経根と馬尾の両方が圧迫されているタイプ。 神経根型と馬尾型の両方の症状が現われます。 |
3タイプに共通して生じる症状が、間欠性跛行(かんけつせいほこう)です。
ある距離を歩くと下肢がしびれたり、痛んだりして歩けなくなり、少し休むと症状が軽くなりまた歩けるようになる症状です。これは歩行中、神経の圧迫が強まるために起こります。
治療方法
神経根型の場合は、まず保存療法で様子を見ることが多いです。
日常生活に支障をきたしている場合は手術も検討されますが、神経根型の人は保存療法で改善が見られることが多いのが特徴です。
馬尾型と混合型の人は保存療法も行われますが、排尿障害や重い脚の痺れ、麻痺などが出ている場合は、手術療法が勧められます。ただし、手術の目的は排尿障害や脚の症状改善なので、腰痛そのものではありません。筋肉の切開で新たに腰痛が起こることもあり、長期間麻痺がある人は手術後も麻痺や痺れが残ることがあります。
主治医とよく話し合い、納得のいく治療を行いましょう。
日常生活の注意ポイント
腰部脊柱管狭窄症は前傾姿勢をとると、脊柱管が広がり痛みが出にくいです。
・歩行時に杖やカート、手押し車(シルバーカー)を使用する。 |
・自転車で走る。 |
一方、状態を反らせると脊柱管がさらに狭くなったり、負担がかかったりするので、そういった姿勢は避けましょう。
ただし、動かないと筋力が衰え痛みが強くなります。無理のない範囲で動きましょう。
保存療法
◆薬物療法:痛みや痺れ、間欠跛行など、症状に応じて組み合わせる。 |
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・非ステロイド性消炎鎮痛薬:急性期の痛みを和らげます。 ・プロスタグランジン製剤:血流を改善し、脚の痛みや痺れを和らげます。 ・筋弛緩薬:筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげます。 ・ビタミンB12製剤:神経の回復を促します。 |
◆神経ブロック:神経の興奮を鎮め、痛みを抑える。 |
薬物療法を行っても強い痛みが続いていたり、痛くて歩けないような時に行います。 ・硬膜外ブロック:障害されている神経根の周囲に局所麻酔薬を注射します。 ・神経根ブロック:神経根に直接注射します。 |
◆装具療法 |
コルセットで腰椎の反りすぎを押さえ、脚の痛みや間欠跛行を軽減します。 |
◆運動療法 |
ストレッチ、筋力トレーニングにより、背骨を支える腹筋と背筋を鍛えて痛みを和らげます。 |
◆温熱療法 |
圧迫されている神経の血流を改善し、筋肉の緊張を和らげます。 |
手術療法
排尿障害や間欠跛行、脚の痺れを改善する目的で行われます。
・椎弓切除術:骨を削除し、神経の圧迫を取り除く。 |
・脊椎固定術:腰椎のずれやすべりを、金具で固定します。 |
腰部脊柱管狭窄症は直接生命を脅かす病気ではありません。手術の必要性は、基本的に患者さんの生活や考え方によって異なり、高齢者が多いだけに全身的な健康状態も考慮して考える必要があります。