脊椎分離症・脊椎すべり症
脊椎は椎骨が連なってできています。
「脊椎分離症」は、椎骨と椎骨の接する間接部分が折れたり、ずれたりして離れてしまった状態のことです。生まれつき脊椎が分離している先天性の人もいますが、多くの場合、成長期にサッカーやバレー野球など、激しいスポーツをして疲労骨折を起こしたことが原因で起こります。若い世代に多いのが特徴の症状です。
多くの場合、痛みがあっても骨折とは気づかず放置されることが多いです。もしスポーツをやっている子供が腰痛を訴えた時は、一度病院(整形外科)を受診されることをおすすめします。起きたばかりであれば「骨折」として治療でき、固定すればくっつけることができます。放っておくと大抵は脊椎分離が残ってしまうので、初期の治療が大切です。
一方「脊椎すべり症」は、脊椎の関節が前方にずれて起こります。
脊椎すべり症には、脊椎に分離が起こっている「分離すべり症」と、分離のない「変形すべり症」の2タイプがあります。
中高年に多い脊椎すべり症は、加齢による骨の変形が原因によることもありますが、脊椎分離症から移行することが多く、脊椎分離症のある人の10~20%ほどに起こります。その場合は、激しいスポーツのしすぎが原因です。
分離のない「変形すべり症」は、加齢により椎間板や椎間関節などが変性すると脊椎を支えられなくなり、ずれが生じて起こります。中高年の女性に多い症状です。
ごくまれに先天的な椎骨の形成不全が原因で起こることもあります(先天性すべり症)。
特徴的な症状
脊椎分離症・脊椎すべり症ともに、主な症状は慢性腰痛です。同じ姿勢をとった後や重労働をした後などに痛みが強くなる傾向があります。
・慢性腰痛。 |
・長時間立っていた後や重労働の後に痛くなる。 |
・体を後ろに反らすと痛い。 |
・脚の痛みや痺れがある。 |
・足の痛みやしびれで一度に長い距離を歩けない(間欠跛行)。 |
治療方法
日常生活に支障がない場合は保存療法で様子を見ます。強い痛みがあっても、薬や装具、運動など症状に合わせて対処するのが一般的です。
間欠跛行がひどく、日常生活に大きく支障をきたしている場合や、保存療法で改善されない場合は、手術療法が検討されます。
保存療法
◆薬物療法:腰痛や下肢の症状に合わせて選択されます。 |
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・非ステロイド性消炎鎮痛薬:急性期の痛みを和らげます。 ・筋弛緩薬:筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげます。 ・プロスタグランジン製剤:血流を改善し、脚の痛みや痺れを和らげます。 |
◆装具療法 |
痛みが強い場合に、コルセットで固定します。 |
◆運動療法 |
急性期が過ぎたら、ストレッチ、筋力トレーニングにより、症状の軽減や再発防止のために行います。 |
◆神経ブロック:神経の興奮を鎮め、痛みを抑える。 |
薬物療法を行っても強い痛みが続いていたり、痛くて歩けないような時に行います。 ・硬膜外ブロック:神経の周囲に局所麻酔薬を注射します。 ・分離部ブロック:分離部に薬を入れます。 ・神経根ブロック:神経根に直接注射します。 |
◆温熱療法 |
血行を促進し腰痛の改善を図ります。 |
手術療法
保存療法で改善されたい場合や、日常生活に大きく支障をきたしている場合に検討されます。
・椎弓切除術:骨を切除し、神経の圧迫を取り除きます。 |
・脊椎固定術:腰椎の不安定性が強い場合に金具で固定します。 |