・非ステロイド性消炎鎮痛薬:急性期の痛みを和らげます。
・筋弛緩薬:筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげます。
・抗うつ剤・抗不安剤・オピオイド(医療用麻薬):脳神経に作用し、痛みを抑制します。
椎間板ヘルニア
「椎間板(ついかんばん)」とは椎骨と椎骨の間にある軟骨の一種で、背骨にかかる衝撃や圧力を吸収するクッションのような働きをします。
体を動かす時は必ず背骨や腰を使うため、椎間板はいつも酷使されています。そのため老化現象も早く、早い人では20代から椎間板の老化が始まるといわれています。
老化が始まり、椎間板の水分が失われ、弾力がなくなると、ひびが入ったりつぶれたり。これが「椎間板症(ついかんばんしょう)」です。痛みが生じることがあり、中高年の腰痛の原因の一つになっています。
さらにそこに強い圧力がかかると、中の「髄核」というゼリー状の物質が飛び出します。これが「ヘルニア」。飛び出したヘルニアが神経を圧迫し、腰痛や下肢の痺れを起こすのが「椎間板ヘルニア」です。
脚につながる神経を刺激することも多いため、お尻から太ももの裏側にかけて痛みや痺れが走る「坐骨神経痛」が現われやすいのも特徴です。
腰椎椎間板ヘルニアは働き盛りの世代に多いですが、最近では高齢者も増えています。
・激しいスポーツをする人 |
・重い荷物を持ち上げることの多い重労働の人 |
・前かがみの姿勢で作業する仕事や立ち仕事の人 |
・運転手など、座っている時間の長い人 |
・肥満の人 |
などは、椎間板ヘルニアになりやすいので特に注意しましょう。
症状
椎間板ヘルニアには「急性型」と「慢性型」の2種類があり、急性型は重いものを持ち上げた時などに起こります。激しい痛みを伴い、歩くこともできないほどですが、日にちが経つにつれ次第に痛みは治まってきます。
・急に現れた強い腰痛 |
・前かがみの姿勢で痛みが増す |
・椅子に長く座っているのが辛い。 |
・坐骨神経痛がある |
・足に力が入らない |
まれに飛び出したヘルニアが大きく、後ろを通る馬尾(ばび:脊髄の末端に続く抹消神経の束)を障害すると、排尿異常や両足の広い範囲の痺れや麻痺が起こることもあります。
椎間板ヘルニアはヘルニアが縮小すれば症状も治まります。
しかしそのまま放置してしまうと、椎間板は損傷を受けたままの状態に。腰に負担がかかればまた髄核が飛び出し、慢性的な椎間板ヘルニアになってしまいます。
痛みが治まってからでかまわないので、病院(整形外科)を受診しましょう。
治療方法
以前は、「ヘルニアは手術で取り除かないと治らない」と考えられていました。
しかし飛び出した髄核が3~6ヶ月ほどで自然に吸収されることが多いことがわかり、自然に小さくなり痛みがなくなることもあるので、最近では日常生活が送れる程度の痛みの時には、保存療法を行いながら経過を見るケースが増えています。
それでもよくならない時や、下肢の痛みや痺れ、麻痺、排尿困難などがあるときには手術療法が検討されます。
中でも急性の馬尾障害、特に排尿の異常が現われた時は緊急に手術が必要です。重症の馬尾障害の場合は、発症から48時間以内に手術をしないと麻痺が残りやすいとされています。足が動かないような著しい筋力低下がある場合も早めの手術が勧められます。
保存療法
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◆薬物療法:腰痛や坐骨神経痛など、症状に合わせて薬が選択されます。
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◆装具療法
急性期にコルセットで体幹を固定し、症状を出にくくします。
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◆運動療法
急性期の後、ストレッチ、筋力トレーニングにより、症状の軽減や再発防止のために行います。
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◆神経ブロック:神経の興奮を鎮め、痛みを抑えます。
薬物療法を行っても強い痛みが続いていたり、痛くて歩けないような時に行います。
・硬膜外ブロック:障害されている神経根や馬尾の周囲に局所麻酔薬を注射します。
・神経根ブロック:神経根に直接注射します。
手術療法
排尿障害や麻痺があるとき、保存療法を3ヶ月続けても症状が軽減しない時に行います。
・ヘルニア摘出術:背中の皮膚を切開し、飛び出した髄核を取り出します。最近はより体の負担が少ない内視鏡手術が増えています。 |
・脊椎固定術:不安定な椎間板を取り除き、金具で骨を固定します。 |
最近では、切開をせず、酵素を注入してヘルニアを縮小させる新しい治療法(髄核融解療法)の開発も進められています。